毎日の食卓に欠かせない長ネギ・葉ネギ。
お味噌汁に、お鍋に、薬味に。
実は、ネギは時間さえあればとても簡単に育てることができます。
今回は畑、プランターでの長ネギ、葉ネギの栽培方法をお伝えします。
長ネギと葉ネギ
ネギの栽培を解説する前に、まずはネギの種類を簡単に説明します。
ネギは「長ネギ系」と「葉ネギ系」、大きく2つに分けることが出来ます。
長ネギ系
長ネギ系には、根深葱(ねぶかねぎ)・白ネギなどが分類されて、40~60cm位の長さがあり、白い部分が大半を占める姿で店頭に並びます。
収穫される前は90~100cmほどの草丈がありますが、先端から30~40cmの青い部分をカットされた状態で売られており、主に白い部分を食べます。
有名な品種(呼び方)では、下仁田ネギ、一関曲がりネギ、深谷ネギなどが、長ネギのカテゴリーに入ります。
葉ネギ系
葉ネギ系は、10~30cmくらいの長さで青い部分(緑の部分)がほとんどなのが特徴です。
細ネギ、九条ネギや、万能ネギが葉ネギの系列です。
ワケギは葉ネギにタマネギを交雑させたもので、厳密には青ネギではありませんが、大きく分けると万能ネギの仲間(葉ネギ)ということになります。
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長ネギを畑で栽培
種から苗を育てるまでの工程は、プランターで作業をするほうが管理がしやすいです。
栽培の時期
7月上旬に育った苗を畑へ植え付け
12月~翌年1月頃に収穫
とおよそ10か月程度の時間を使います。
これはいわゆる「春まき」という手法で、他にも「秋まき」という方法もありますが、春まきの方が温度管理をしやすく失敗が少ないので、初めて長ネギの栽培に挑戦する方は、春まきをおススメします。
種から苗まではプランターがオススメ
種から苗を育てる時は、畑の一部を苗床(「なえどこ」:苗を育てるために整備をした場所)としても結構ですが、プランターの方が管理しやすいです。
プランターで育苗(「いくびょう」:畑に植え付ける前に種から苗を育てること)する土は、市販の園芸用培養土が安価で簡単で、間違いがありません。
種は種苗店やインターネット販売で入手してください。
土壌づくり
育った苗を植え付ける畑では、深植えをします。
このため土壌の、深い部分の性質が長ネギの生育や収穫量、品質に大きく影響します。
白く・柔らかく・甘みの強い長ネギを育てるには、通気性、水はけ、保水性がよく、土寄せ(つちよせ:後に説明)したときに土崩れしにくい土壌づくりが大切になります。
雨が降った後カチカチに固まるような土壌では、堆肥を混入する・苗の植え付け時に切り藁(「きりわら」:お米を収穫した際に残った、稲の茎の部分。米農家さんやホームセンターなどで入手が可能です)を敷いておくなどの工夫が必要です。
栽培の流れ
種まき
プランターの用土に10cm間隔に深さ1cmほどの溝をつくります。
この溝に1cm間隔にタネをまいて軽く土を被せます。
光が無いと発芽しませんので、土は薄く(5mm程度)被せる程度にしてください。
発芽、間引き、追肥
発芽したら、芽が約3cm間隔になるよう、元気のない芽や成長が遅い芽を抜き取ります。
これを間引き(「まびき」)とよびます。一見、かわいそうな行為ですが、全てを残したままにしておくと、健康で丈夫な苗は育てることができません。
苗の草丈が10cmほどになったら、液肥(液体肥料:植物の成長に必要な栄養素を溶かし込んだ、液状の肥料)を、1週間に一度のペースで2~3回投与してあげましょう。これを追肥(「ついひ」)と言います。
草丈が40~50cmになったら、植え付けの適期です。
畑に苗を植え付ける
意外に思うかもしれませんが、植え付け前には畑を耕してはなりません。
実は、長ネギの白く甘い部分は日光にあたっていない部分であり、あの美味しい部分をゲットするにはそれだけ、光に当たっていない「土の高さ」が必要になります。
地表近くに植え付けるとかなりの量の土を高く盛っていくことになり、場所をとってしまいとても非効率です。
よって長ネギの栽培には、あらかじめ溝を掘っておき、溝の底に苗を植え付け、成長に応じて土をかぶせる(土寄せ)、という方法を取ります。
苗を植え付ける畝(うね)の中央に、幅15cm×深さ20~30cmの溝を掘りましょう。
ネギの白く甘い部分の長さは、この溝の深さが決め手になると言って、間違いありません。
次に、溝の壁に、苗を5cmの間隔でまっすぐ(垂直)に立てて、軽く抑えます。長ネギの根元には切り藁をたっぷりとかぶせ、苗を安定させます。
掘り起こした土を藁の上に3~5cm戻して、その上から堆肥や遅効性の化学肥料を与えます。
このタイミングの肥料は元肥(「もとひ」)と呼びます。
水やり
苗を植えつけた直後に一度水やりを行いますが、その後は水やり不要です。
深い部分に植え付けるので、水をやり過ぎると長ネギが腐ったり、病気にかかったりします。雨などがあれば、特に気を付けて水やりが過剰にならないようにしてください。
葉がぐったりとしおれない限り、水やりはしない方が良いですよ。
土寄せ
植えつけの2~3週間後から収穫の1カ月前まで、4~5回程度に分けて行うのが、土寄せです。
長ネギの特徴である白い部分は、土がかぶさって日光を浴びることができなかった部分です。この白い部分は長ネギの特徴であり、とても美味しい部分です。
成長に合せて、丁寧に土寄せをすることで、意図的に白い部分を作り出しましょう。
しっかりと茎元に土を寄せることで、良い質の長ネギが収穫できます。
収穫
(植え付けた位置から計算した)全体の草丈が90~100cmになったら収穫できます。
埋めた溝の部分を掘り起こし、反対側からも丁寧に掘って、長ネギを引き抜きます。
必要なもの
- 苗を育てるためのプランター(15cm以上の深さのもの)
- ジョウロ
- 畑に溝を掘るクワ
- 土寄せを行う小型のクワ
栽培に適した環境
品種によるので、詳しくは種袋の記載内容に従ってください。
大まかには、発芽適温は15~25℃(1℃程度で発芽する品種もります)。
生育温度は15~20℃くらいが良いでしょう。
全般に35℃を超えても枯れることはありませんが、生育は遅くなります。
長ネギは寒さに強い性質がありますし、収穫前に寒さにあたることで甘みは増します。
温暖な気候でしっかり成長させた後、寒さにさらして収穫、がキーワードです。
失敗を逃れるチェックポイント
植え付け時の溝にはしっかり深さをとる、水やりを極力しないなどが大切です。
その代りしっかりとした量とペースの土寄せで、白い部分が長くなるように心がけてください。
肥料
苗を畑に植え付けた後は、植え付け時の元肥だけで育ちます。
追肥は行いません。
害虫・病気対策
害虫
病気や害虫に強いので、それほど神経質になる必要はありませんが、アブラムシ、ヨトウムシが目につくようであれば、殺虫剤を散布してください。
種苗店などで店員さんに相談すると、適切な薬品を教えてくれます。
稀に土中にネキリムシが発生することがあります。ネキリムシは捕獲が困難ですので、こちらもネキリムシの殺虫剤で対処します。
ネキリムシにやられると、それまで元気だった長ネギが一瞬で枯れてしまうので、注意だけは欠かさないようにしてください。
病気
病害には、べと病、黒班病、さび病があります。
いずれも、葉の部分が変色したり(べと病)、黒ずんだり(黒班病)、オレンジ色の楕円形を無数につけたり(さび病)します。
伝染しにくい病気ですので、焦らずに抜き取って畑から取り除くか焼却してください。
原因は湿気です。
間隔を詰め過ぎないように植える、水をやり過ぎないなど、事前の心がけが大切です。
連作障害
ユリ科全般に言えますが、連作障害(同じ植物を同じ土で何年も連続して栽培していると、次第に土の成分が偏って、枯れやすくなったり、奇形を生じたり、病気にかかりやすくなる現象)は、起こりにくいものと認識していただいて結構です。
気になる方は1年交互に別の品種、科目(ネギはユリ科)の栽培をすると良いでしょう。
葉ネギをプランターで栽培
栽培の時期
6月下旬~7月上旬 収穫
が大体の目安です。
苗は種苗店で入手してください。
緑が濃く、太い苗を選びましょう。
土づくり
市販の培養土でOKです。
栽培の流れ
苗の植え付け
苗の植え付けの間隔は7~10cm程度が最適です。
もっと密に植えても育たないことはありませんが、発育が悪い・大きく育たない・風通しが悪い(=湿気がたまり病気の元になります)などのデメリットがあります。
水やり
苗の植え付け後には、たっぷりの水を与えましょう。
その後は、水をほとんど必要としません。
逆に、水の与え過ぎは病気の原因になりますので、水やりの間隔は、最低でも3日は空けるように心がけてください。
収穫
収穫のタイミングは草丈が15~20cmの頃。
株ごと抜き取っても結構ですが、葉ネギは再生能力がとても高い植物です。「刈取り」(土上5cmを目安に、ハサミで切り取る)をすると、新芽がグングン伸びてきます。
頃合いを見て、必要な分だけ刈取ると、種まきを行うことなく葉ネギを次々に収穫できます。
分けつ(ブンケツ)
葉ネギは活発に、分蘖(ブンケツ)をする植物です。分球とも言います。
元々1つだった球根が成長にあわせて、収穫期の頃には5~6の球根に分けつしています。
新たに種を購入して、1から播き直さなくても、増殖させることも可能です。
丁寧に株ごと掘り起こして、球根一つずつやさしく分けてやります。
5cmほど掘って、ばらした葉ネギの球根を植え付けます。
この後は通常の育て方をしているだけで、再び5~6本の球根を持った株に成長します。
バラして植え付けた後は、土上5cmのところで刈り取っておくとすぐに新芽が出てきます。
必要なもの
標準サイズ(横幅65cm、深さ15~20cm、奥行き15~20cm)で10~12株程度が栽培できます。栽培したい数量に応じて、大きなものを使用しても結構です。
・培養土
・液肥
刈取りを行った後、液肥を施しておくと、葉ネギの再生能力が高まります。
・ジョウロ
栽培に適した環境
品種によりますので、詳しくは種苗店の店員さんにご確認ください。
ここでは目安だけご紹介します。
発芽には15℃以上が必要で、17~8℃が適温です。生育には20~25℃くらいが適しています。
発芽後は日陰でも構いませんが、日向の方が発育は良いので、出来ればお日様に良く当たる南向きの場所で栽培してください。
失敗を逃れるチェックポイント
水をやり過ぎない
土が乾いた時に3日は開けてたっぷり、で大丈夫です。
収穫期を逃さない
そこそこ(草丈が20cm未満)で、刈取りましょう。
気温によっては、すぐにツボミがついて食味・風味を失います。
寒い時期は刈取りを控える
温かい時期は、刈取り後の再生に勢いがありますが、寒い時期は刈取りを行わないようにしましょう。
再生するのに長い時間がかかります。
株を掘り起して球根をバラしたものから、元気の良いものを2~3本を植え付けて、植え付けなかった葉ネギを調理にご使用いただくと良いでしょう。
肥料
元肥だけで育てるのが基本です。
ただし、葉ネギを刈り取った場合は、液肥を施しておくとよいでしょう。
病気・害虫の対策
長ネギに同じです。
連作障害
葉ネギの連作障害は起こりにくく、2年~3年は同じ土で継続して栽培しても大丈夫です。
温かい時期は刈取り、寒い時期は球根をバラして再植え付け、でドンドン増殖させましょう。
混植(「こんしょく」)
自然に近い形で栽培することを目的にした方がしばしば採用するテクニックに、混植(こんしょく)【=コンパニオンプラント】という手法があります。
例えばキュウリを栽培する畝があるとします。
この畝の中央にはキュウリを植え付けますが、栽培時期が長く、栽培の手間の少ない葉ネギを、キュウリの畝の両側に植えておくと、次のようなメリットがあります。
- キュウリに虫が付きにくい
- 葉ネギの根が張ることで畝が崩れにくい
- 土中の菌の量や質がお互いに良い状態に保たれる
- 連作障害を解消しつつ栽培を継続する
- 場所を有効活用できる
興味のある方は是非。
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まとめ
少し栽培に時間はかかりますが、複雑な手入れもお世話も必要ないのが、長ネギ・葉ネギの栽培です。
長ネギは土寄せを、葉ネギは刈取り、もしくは再植え付けを行うことで、収穫量は飛躍的にアップします。
ぜひ、挑戦してみてください。
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